000・0日目“創生の時”

 意識が堕ちていく様な感覚と共に、周囲の世界が実世界から仮想世界へと変わっていく。
そして、“いつもの場所”に辿り着くと、到着するのを待っていた様に6つのアイコンがポップアップしてきた。
 
「待たせたね」
「みんな今ついたところよ」
 
 そう言うと、今日の進行役を担当する彼女は周囲にいる全員を見渡し、キューブを提示した。
早速キューブの情報を読み取る。
 
『赤い手は滅びのしるし』

  • キャラクター・レベル5〜10レベル用シナリオ
  • 対象人数4人

 
「向こう(海外)の作品か?」
「えぇ、問題あるかしら?」
「んぅ…」
 
 周囲を見渡すと、そこには歴戦の勇士と呼べる様な存在は3人しかおらず、他の2人は自分と対して変わらない経験かやや劣るといったところだった。
 
「(難易度が高くても)6人ならなんとかなるか」
 
 しばしの逡巡の後、そう結論付け、今回の冒険に参加する事を伝える。
 
「そう良かったわ、みんなあなたの答え待ちだったから。じゃぁ早速始めましょうか?」
「あぁ」
「えぇ」
「はぁーい」
 
 そう言うと、皆、次々にキューブ内にアクセスし、この場を去っていった。
そして残った1人は、皆が旅立った後、鮫の様に笑うとキューブに次の文を付け足した。

  • 冒険者達と対峙する敵性クリーチャーは、最大HPを保有する
  • 冒険者達と対峙する敵性クリーチャーは、大いなる神の意思により、能力及び装備が強化される

 
       *   *   *
 
 他の参加者とのやり取りで今回使うキャラクターの骨組みは決まっていた。
それは、相手の戦術ミスにより、1日で5体の竜を屠るという偉業を成し遂げた彼だ。
 
『ランス』

  • 人間(Human)・ファイター(Fighter)・男性(male)
  • 戦場で多大なる武勲をあげ、最高の戦士の証である勲章を3度受章しているが、その自由奔放な性格で軍規違反を繰り返し、前述勲章を3度共剥奪される程の問題児。背中を預けていた盟友が大きな戦で戦死した事で天涯孤独の身となり、今に至る。

 
 今回の役割はタンク*1とすると、これでは合わない。
クラスリストをまわし、目的のクラスにタッチする。それに合わせて情報ウィンドウがポップアップした。
 
『ハイローニアスの教義をインストールしますか? Yes/No』
 
 Yesをタッチし、ランスにハイローニアスの教義をインストールする。
元々のキャラの方向性からはかなり異なるが致し方がない。
クラス構成と能力値、装備を提示されたレギュレーションの下、決めていくと、彼女に出来上がったキャラクターを提示する。
しばらくして、幾つか添削されたものが戻ってきた。
構成が変わり、見慣れぬものもあるが、公正な彼女の事だ、明らかに不利になる様な事はすまい。

*1:敵の攻撃を自分にひきつけることで味方を守る役割