001・1日目“襲撃”

 
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 先日の実家での件の後、“かの神”の怒りをかっている為、数日の休養の後、その地を離れる事にした。
そして、今は“エルシアの谷”と呼ばれる地域を東から西へ、一路“ドレリンの渡し”と呼ばれる街を目指していた。
それは、アローナの司祭長セリリア殿とハイローニアスの司祭長オズマ様から連名で一通の手紙を預かってきたからに他ならない。
ドレリンにて何かが起こっている…そう思わずにはいられなかった。
 
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 この旅の仲間は6人。
まず先頭を行くのは、チーム戦術急行の要となっているアイウェン。2つの武器を器用に操るエルフの野伏で、彼女の大自然に関する知識は舌を巻く程だ。
そして、その脇を歩いているのが、ルシアン。剣と魔術を巧みに操るエルフの黄昏の剣士で、剣と魔術を同時に使った攻撃は非常に頼りになる力だ。
ルシアンの後ろを歩くのが、アルウェン。魔術の中でも特に召喚術に秀でたエルフの魔術士で、呪文についての豊富な知識を様々な場面で役立ててくれ、また私のパートナーでもある。
アルウェンの隣を歩くのは、アルターリエル。森の女神アローナを奉じるエルフの司祭であり、今回の旅の切欠となった、セリリア殿からの手紙を受け取った人物でもある。彼女の持つ癒しの力は戦闘で傷ついた仲間達の身体を良く癒してくれている。
最後尾を歩くのが、ケレブリアン、エルフのドルイドだ。彼女の盟友であるフアンという名前の大猿は時に敵を倒し、時に力仕事を手伝い、欠く事の出来ぬ仲間となっている。
彼女達はエルフの五姉妹―――以前は四姉妹だった様な気がしているが、多分気のせいだろう*1―――なのだが、私との生活が長かった為か、はたまたかの神―――破壊の女神ティアマト―――の呪いかまるで人間と同じ様に眠る身体になってしまっている*2
彼女達は何も言わないが、旅の目的の中には彼女達を元に戻す事も含まれている―――もちろん、彼女達には内緒だが―――。
最後にルシアンの隣を歩いているのが、この私、ランス・ダイソンだ。ハイローニアス様を奉じる聖騎士でもある―――以前は戦場で多大なる武勲をあげ、最高の戦士の証である勲章を3度受章しつつも、その自由奔放な性格で軍規違反を繰り返し、前述勲章を3度共剥奪される程の問題児で、無謀な突撃を繰り返していた気がするが*3―――。無事兄上も結婚した事で一族の系譜は次代へと繋がっていくだろう―――以前は背中を預けていた盟友が大きな戦で戦死した事で天涯孤独の身だった様な気がするが気のせいだろう*4―――。
前回の試練から戻って以来どうも、記憶が曖昧な部分がある様だ、注意しなければならない。そう考え、ここにこれを記す事にした。
 
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 午後の日差しが照りつけ、気温も高く、風のない今それは更に高く感じていた。
 
「後、何マイルか歩くと“ドレリンの渡し”よ」
 
 先導するアイウェンが振り返りながら仲間を励ます様にそう言った。
それを聞き、皆もうひと踏ん張りだとばかりに背負っている荷物を背負い直した瞬間、アイウェンとケレブリアンがぴたっと立ち止まった。
 
「どうした?」
「敵襲!!」
 
 彼女達が叫ぶのと、弓を構えたホブゴブリン達が道の左右からぬっと現れるのは、殆ど同時だった!

*1:前回のコンベンションの際のシナリオに参加していない面子がいる

*2:全員人間で作り直している

*3:前回は《突撃兵》を使うキャラだった

*4:前回DMに強引に書き換えられた